※再掲 九桐
闇の中、ただひたすらに続く斬撃の気配。
血糊がこびりついたような心地に気づけば、すでに麻痺した嗅覚。
両目と同様、耳ももはや何一つ捉えることをせず、ただ骨身にしみ入るのは振動のみ。
ゆっくりと両耳を手で覆い、ぶん、と頭蓋を震わせる何事かに聞き入る。
そうして心づく。
では音とは、この身を揺らしている震えなのかと悟る。
ひたすらに躯が重い。
持ち上げた腕も。
闇にこらす瞼も。
唇さえ、気づくとだらりと垂れ下がっている。
「…………!」
誰かが呼ばわっている。
そのふるえが伝わってくる。
震えるのは耳の奥ではなく、頭蓋骨でもない。
この胸を貫く刃が震えたのか。
そう思いながら、長く長く息を吐いた。
泣き顔が、ほのかに思い出されたが、それもすぐに消え果てた。
師匠、師匠と呼ぶと、答えはすぐに返ってきた。
友がおかしげに笑う。
そんなに呼ばずとも、急かさずとも、いったいどこへ行くというのだ?と。
そう言われても仕方がない。
ただ、ひたすらに心が急くのだ。
この温もりが両腕の中から消え失せてしまいそうで。
愚かしいといわれようと、笑われようと。
今、心の底からしたいことは、骨の砕けそうなほど抱きしめることだ。
黒目がちのあのまなざしが、こちらを見て、得も言われぬ表情を浮かべることだろう。
それきり、きっと、悪夢の残滓は消え去って戻らぬだろう。
あらゆる星が かがやいている
[2回]
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