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あらゆる鳥のしらべ

埋めつくす本たち
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四月の魚 4・外法帖

※再掲  九桐



闇の中、ただひたすらに続く斬撃の気配。
血糊がこびりついたような心地に気づけば、すでに麻痺した嗅覚。
両目と同様、耳ももはや何一つ捉えることをせず、ただ骨身にしみ入るのは振動のみ。

ゆっくりと両耳を手で覆い、ぶん、と頭蓋を震わせる何事かに聞き入る。
そうして心づく。
では音とは、この身を揺らしている震えなのかと悟る。

ひたすらに躯が重い。
持ち上げた腕も。
闇にこらす瞼も。
唇さえ、気づくとだらりと垂れ下がっている。

「…………!」

誰かが呼ばわっている。
そのふるえが伝わってくる。
震えるのは耳の奥ではなく、頭蓋骨でもない。
この胸を貫く刃が震えたのか。
そう思いながら、長く長く息を吐いた。
泣き顔が、ほのかに思い出されたが、それもすぐに消え果てた。

師匠、師匠と呼ぶと、答えはすぐに返ってきた。
友がおかしげに笑う。
そんなに呼ばずとも、急かさずとも、いったいどこへ行くというのだ?と。
そう言われても仕方がない。
ただ、ひたすらに心が急くのだ。
この温もりが両腕の中から消え失せてしまいそうで。

愚かしいといわれようと、笑われようと。
今、心の底からしたいことは、骨の砕けそうなほど抱きしめることだ。
黒目がちのあのまなざしが、こちらを見て、得も言われぬ表情を浮かべることだろう。

それきり、きっと、悪夢の残滓は消え去って戻らぬだろう。


あらゆる星が かがやいている


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