時折聞こえてくるのは、屋根の重みに耐えかねた主柱が崩れるのか、それとも瓦が滑り落ちて砕けるのか。
どちらにせよ、顛末は揺るがない。
この街は消える。
蘇るとしたら、きっと、長い長い時間が必要だろう。
煤まじりの熱風が、ばさりと髪を叩いて、とりとめない物思いから覚めた。
これだけの炎ならば、もうじき雨が降る。
煙の中まばたいて、空を見上げた。
腕を広げるように、両の翼を伸ばし、上へと身を投じる。
上へ。
上へ上へ上へ。
煙の向こう側は、すでに夕焼けだった。
地平線は、記憶にあるものとは大きく異なって、その違いに今なお驚きが勝る。
遙かな山脈を染めて、太陽は傾こうとしている。
じきに月が昇る。
たった一つの月が、地平の向こうからゆっくりとやってくる。
けれど、今はまだ、昔なじみの太陽だけが空にある。
白い山肌が、赤く赤く輝く。
遠く、ずっと遠くで炎のように輝く世界を見晴るかして、翼を羽ばたかせた。
足下で燃え盛っていた炎は、まだ消えない。
吹き上がる熱風が、じりじりとつま先や躯をあぶる。
この炎は、熱は、何を生み出すのだろう?
少年は、赤い衣の内側にはらんだ熱をもてあましている。
一条の涙は、目の縁ですぐに乾いてしまった。
この新しい世界に、どれだけの時間が残されているのだろうか?
それを知る者はいない、ただ一人、精霊の王の契約者を除いては。
彼はまず、世界はひたすらに重く、熱いのだと知った。
それは、数知れぬ人の思いが凝ったからだけれど。
卵は世界だ。
生まれようとする者は、ひとつの世界を破壊せねばならぬ。