男の子が、かけだして、次々とむしっていく。
昨日から学校に来た子。
赤い服を着て、鳶色の髪がふわふわな、男の子。
あんまり喋らない子。
じっと見ていたら、こっちに駆けてきた。
「あげる」
そう言って、右手に握った黄色い花を、一輪くれた。
左手には、もっとたくさん。
そっちを見ていたら、もう一本くれた。
「あとは、ダメだ。父ちゃんと、母さんにあげるから」
そうか、と思った。
そうして気づいた。
屈んで、足下の花を、自分で摘んだ。
「ありがと。私もあげるね」
ちょっと驚いた顔が、すぐに大きくほころんだ。
「ありがとな!」
黄色い花。
お日さまの花ねと言ったら、うなずいてくれた。
「家に飾ったら、お日さまが部屋に来たみたいだろ?」
男の子は、そう言ってもっと大きく笑った。
ベッドのそばに置いたタンポポは、朝、固く花びらを閉じていた。
それが寂しくて、枯れたのかと思って、しょげながら学校へ行く。
すぐに、昨日の子が真剣な顔で話しかけてきたので、教室は、ほんの少し騒然とした。
「なあ。タンポポ、部屋に飾るときは窓際じゃないとダメだぞ。
お日さまにあたらないと、寝ちゃうんだって。父ちゃんが言ってた」
「ほんと? わあ、知らなかった」
「そっか」
得意げに男の子が鼻をこすった。
そうして、言った。
「昨日も思ったけど、おまえ、タンポポみたいな髪だなあ!」
※何気ない一言で、人は胸をつかれてしまうもの※