こたつに両肩までつっこんだ格好で、とっくに空になった大皿の向こう側を眺め、龍麻は思案している。
さっきまで、ぽんぽんとリズム良く言葉を交わしてた相手は、龍麻のようにこたつに両腕を差し込み、身を深く折ってこたつ板に頬を押し当てている。
寝息のように間遠な呼吸だ。
つまり、眠っている。
少し、会話のやりとりに間隔が空いたと思ったら、眠っていた。
よほど疲れていたのだろう。
食べて、喋るうちに、表情がほどけていくのがわかった。
そうしてそのまま眠ってしまった。
横向いた顔の、高い鼻筋とか、髪の間から覗く耳たぶとか、頬骨のあたりを眺めて、自分も顎をこたつにのせた。
しばらくそうやって寝顔を眺めた。
寝息だけが聞こえていた。
気をとり直すべく、ごつん、と額をこたつに打ち付け、顔を上げた。
起こすのは気の毒だったけれど、まだ夜は冷える。風邪を引いたらいけない。
「おーい」
こたつを出て、隣に膝立ちになり声をかけたが、起きそうな気配はなかった。
肩を揺すろうかと思ったが、あまりにすやすやと眠っているので気が咎める。毛布と、敷き布団と、枕をこたつ横に用意したが、やはり起きない。腹をくくって肩を揺すり、声をかけた。
「おーい、祇孔、布団用意したから」
低い声で、何事か言ったので安心しかけたが、あまり状況は変わらなかった。
ごろりと、敷いた布団の横っちょに頭を載せて横になると、また寝息をたてる。今度は、もっと深くゆるやかだ。
「こら、こたつから出ないと」
仕方がない。
脇の下から腕を回し、胸元で手を組んでグッと引く。
……重かった。
本当に寝入っているのがわかる。
ほんの数十センチを移動させるのに四苦八苦した。
「ほら、枕。毛布」
寝ているとわかっていても声をかけながら、まわりを整えた。こたつの電源を落とし、足下から遠ざけ、皿を台所へ下げる。
座敷に戻ると、布団の上は、毛布でできた小山になっていた。
そばに膝をつき、毛布の中へと呼びかけた。
「おやすみ」
にゅうっと腕が出てくるかと思ったが、静かな寝息だけが続いている。
「……お疲れ様」
山に腕を投げかけ、そのぬくみにちょっと目を閉じてみる。
温かかった。
きっと夜中だろう。
鼻先には夜の匂いがまとわりついている。
いつ、眠ったのだろう、服を着たままなのだが、それにしてもまぶたが重い。
色々面倒なので、あっさりと、眠り続けることを決めた。
仕事は片付けてきた。
帰り着いて、龍麻の顔も、ちゃんと見た。
そうして今夜も、傍らには、ほのかに温かい塊がある。
眠った後は、より素直にくっついてくれるので、村雨はいつも夜中を待って引き寄せる。
吐息をついて、柔らかくあたたかな体に鼻先を埋める。
鼻にあたるTシャツの匂いを吸いこんで、村雨はもう一度、眠りについた。
※布団に潜りこんでくっついてきてくれる龍麻に、疲労で気づけない、よって据え膳を食い損ねるところがウチの村雨。でも抱き枕で就寝がすでにお互いデフォなあたり、充分暗殺(滅殺)対象。※