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あらゆる鳥のしらべ

埋めつくす本たち
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あまさずに ・TOS

※素案をいただきました。浸蝕していく行為。




おやすみ、と告げるために、寝台に腰を掛けた。

今日の宿は、ちゃんと二人分の寝台があって、間に小机がある。便せんやペン、インクもそろって、ちょっと位が高い。
久しぶりの街だから、良い部屋に泊まろうと言ったのは、ゼロス。
ロイドは、財布の中身を思い浮かべたのか、少し眉根を寄せたがすぐうなずいた。
「じゃあ、寝るか」
ロイドが言う。
目尻がとろりと下がって、横になればすぐに寝息を立てるだろう。
「うん、おやすみ」
風呂に入り、同じ香がまとわりつく髪をすいた。
「ちゃんと、拭いたな」
「おう」
少し得意げで、でも眠気には勝てず、ぼやけた声で答えるロイドに、笑いかけた。
「ほら、寝ちゃえ」
「うん」
毛布を引き上げ、首のまわりを整えてみる。
そんな子どもっぽいことを、とロイドが言ったのはずいぶん前の話で、今では当たり前になってしまった。
これは、儀式だ。
そう心につぶやきながら、ゼロスは身をかがめた。
こめかみを、柔らかく唇で触れる。
くすぐったそうに笑う声が聞こえ、ほっと息をついて、反対側にもまた口づけを。
頬を撫でて、もう一度元のところに。
「ロイドくん」
「んー」
顎には1つ。
鼻のてっぺんに1つ。
耳たぶを、軽く唇で挟んで1つ、反対側にも1つ。
くすぐったがって、それでも眠いのだろう、目を閉じたまま首をすくめるので、頭を両手で押さえこんで、もう一度両耳を。
「ぜろす、もう寝ちゃえよ……」
「挨拶が終わったらなー」
「……ばーか」
か、という音がぽこりと弾けて寝息に近づく。
それを良いことに、まぶたに1つずつ。
両の頬にも。
つくづく、顔のパーツがどれも2つずつあるのは良いことだ。
キスは、あまねく平等に。
額の真ん中には1つ。
何となく残念なので、生え際にも1つ。
ほわほわの髪が鼻先をくすぐって、笑いがもれる。
髪をすいて、曲げた腕の中に寝息をたてる頭を置いて、あまさず口づけを落とす間、ずっとみぞおちがムズムズするのを我慢している。
我慢して、でも我慢しきれず、少しずつ少しずつ、寝しなのキスは、その舞い降りる場所をひろげている。
ため息をついた。
唇で触れていない場所は、なくなってしまった。
額を、額に合わせる。
「んー、ぜろす、どした?」
寝ぼけた声。
これだけ近くに顔を寄せていても、驚かず、ただ眠りの淵で笑っている。
いつものように、ゼロスのすることを、やがて許してしまう。
「ぜろす……?」
「おやすみ、ロイド」
だから、進めるのは、今夜もほんの少しだけ、キス1つにしておこう。

昨日よりも1つ多く。
くぼんだ鎖骨の間に、1つ、キスを増やそう。
心臓へと、また少し近づけていこう。

最初のキスから、道半ば。



これも一種の調教か。神子、ご苦労さん。

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