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あらゆる鳥のしらべ

埋めつくす本たち
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繋ぐ ・剣風帖

引っ越してきた街を一回りして、最後にたどり着いた河川敷を歩く。
数日雨が続いたためか、芝を踏むと、水が浮き上がった。
河川敷の芝は、人が歩くせいなのか、所々剥げたように土がむき出しだ。
色合いを変えた緑がそこここに濃淡を作り、その上を踏めばかすかに身体が弾んだ。


昔、同じように河川敷を歩き、踏むのは可哀想とつぶやいた彼に、育て親は言った。
「踏まれなければ、この草のうち幾種類かは、育たない」
だから大丈夫だと言われて、そっと足をおろしたものだった。
小さな星のように、野草が花をつけている。
眺めながら歩く視線の先に、学生服姿が映った。
東京の制服って、どれもしゃれて見えるのはなぜだろう。
ボタンのない詰め襟なんて、マンガかアニメだと思って、そのすっきりした姿を眺めた。
男子学生は、遊歩道を足早に歩く。
(ああ、かっこいいなあ)
そう思った時、ふと目があった。
すれ違ったと言うには遊歩道が広く、お互いに距離がありすぎて、それでも視線が合ったのはわかった。
糸のように細い線が、あちらとこちらを繋ぐ。
それが、遠ざかって、細く伸びて、伸びきって、もうとっくにすれ違ってしまって、お互い正面を向いているのだから切れているはずなのに、繋がっている気がして、最後にぷつりと音までしたように感じた。
「変なが」
ぼそっとつぶやいて、振り返りたい気持ちを押しとどめる。
もし、振り返ったらどうなるんだろう。
そんな気持ちもグッとつぶした。
明日は、入学式だ。



春霞というのだろうか。空は青いのだけれど、どこかぼんやりした明るさだ。桜も、ほとんど散り終わり、名残の花びらが草むらや道の端にわだかまっている。
「いい天気」
「そうだね」
龍麻は、河川敷の芝に足を踏み入れている。
「きれいだなあ、春は何でも」
ひょい、と屈んで、指先を草むらに潜らせる。歩みを止めないでいると、つんのめるような足音をあげて、すぐに龍麻は追いついた。
その、ちょっと足取りを早めるところが好きだ。
「ヨモギ生えてるけど、もう育っちゃったし無理かなあ」
いい香りだよ、と白い産毛の取り囲んだ葉をもんで言う。犬の散歩がなあ、とつぶやきながら、ふと足を止めては、また駆け足で追いつく。
抱きしめたいな、と思った。
口には出さず。
「そうそう。前に、ここですれ違ったんだ、覚えてないだろうけど」
「僕が、君と?」
「うん」
さらりと、龍麻はそんな大事なことを、ヨモギの若芽を鼻先に当てて言う。
「3年前。あの時はわからなかったけど、拳武館の制服着て、ここ歩いてたよ」
「……それは」
駅へ向かう道の一つだ、それはあり得る。
けれど、龍麻と?
そうして龍麻はそれを覚えている?
「ふっふっ。忘れてるだろう?」
「いや……よくまあ、人の顔を覚えていられない君が、そんな前の……」
「紅葉は、そこが甘い」
龍麻がポイ、と手を振った。

「ここで、運命とか、愛とか、そういうこと言ったら、一発で惚れちゃうのにさ」

笑いながら、顔に向かって放り出されたヨモギは、あたたかく香った。
「……もうすでにベタぼれな場合はどうすれば良いんだい?」
「さあ?」



とりあえず、手でも繋ごうか。

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