単調な金槌の固い音。
耳慣れない調べは、沿うように流れながら、より弾んでいる。
龍斗が手をかけた引き戸が、音もなく開いた。
そっと、首を傾げ、薄暗がりに沈むお堂を覗く。
ここは「礼拝堂」なのだと、御神槌は言った。
それが寺や宮とどう違うのか、龍斗には判らない。
だが、確かにここは「礼拝堂」という特別な空間に思える。
聞こえる調べが、そう思わせる。
固く軽やかな音が止み、調べも止んだ。
長く伸びた軒が遮り、中は暗い。
その暗がりに淡い色の光が浮かんでいる。
「やあ、龍斗」
光が、龍斗を呼ぶ。
「どうしたんだい」
頭に淡い光を頂く青年は、いつものように、穏やかに問う。
右手に構えたかなづちを祭壇の上に置き、青年は笑ったようだった。
「龍斗?」
「……今の」
それは神様のうただろうか。
御神槌がうたうような。
だが、青年は影に沈んだ頭を軽く振った。
「違うよ、龍斗」
青年は静かに言った。
これは牛飼いの歌だ。
胸を撃たれた哀れな男。
彼は見知らぬ私に頼んだ。
ゆっくりと静かに葬送の太鼓と笛を鳴らし、
牛飼いが柩をかついでおくれと。
その言葉を聞き届けた私が、
末期の水を求める間に彼は死んだ。
「神を恐れぬ無法者の歌さ」
そう言って、青年はまた、浮き上がった壁板をかなづちで叩き始める。
青年の瞳は影に沈み、とても暗く見えた。
龍斗は、そっと調べを口ずさんだ。
「……気に入った?」
そうかも知れない。
きれいな調べだ。きれいな、音だ。
「じゃあ、教えてあげる」
でも、もっと幸せな歌を。
青年が奮うかなづちは、釘と一緒に、何か遠い出来事を潰している。
龍斗は首を振った。
「……今のうたが良い」
「どうして?」
だって、それは、祈るうたではないのだろうか。
龍斗は呟いた。
彼のうたう「牛飼い」は、きっと龍斗の知るそれとは違うのだろう。
だが、どこか耳になじむ調べは、確かに祈りなのだと思えた。
ほのかに光る淡い色の髪が、光背のようにも見える。
青年は、同じうたを口ずさみ始める。
再び、穏やかな調子で、釘が打ち込まれる。
龍斗はまわらぬ口で、その調べを追った。
※クリスは、まったく異なる文化からの視点なので、混ぜてみたくなります※