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あらゆる鳥のしらべ

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木枯らし ・剣風帖


ひーちゃんは、だいたい薄着だ。
だけど、それにも限度ってものがあるだろう。

12月もいい加減の近頃は、俺や大将だってさすがにダッフルやダウンを引っかけてる。
なのに、昨日、薄氷が一面に張った朝のひーちゃんの格好ときたら、制服の前を開けたのを見ると、カットソーのみ、一応手袋なんかしてはいたが、秋口と変わらないレベルだ。
なんであの格好で、西口の強烈なビル風をやり過ごせるんだ?
見てるこっちが寒いんだ!と叱りつけて、やっとジャージを着せたんだが、教室に入ったとたん脱ぎやがった。
「暖房入ってるんだから、暑いんだよ」
お前の気温感知機能が、まったくわからん。
ガタが来てるんじゃねえか?

旧校舎で合流した時も、ひーちゃんの薄着に皆が目を剥く。
紫暮は、似たような格好だけど、それでも薄っぺらさの違うひーちゃんには、だいじょうぶかと聞いてる。
如月はもっとあからさまに、顔をしかめてる。

「龍麻」
休憩を宣言したら、壬生が手を上げて呼ぶので、ひーちゃんはひょこひょこそっちへ行った。
大宇宙組や紫暮、大将は、ようやく体がほぐれたらしく、薄着モードになってきた。
俺も、制服の前を開ける気にようやくなった。
もうちょっとすると、今度は汗が噴き出してくる。
まあ、これで旧校舎を出ると、北風にキュッと縮こまっちまうんだ、これが。
アクエリアスを飲みながら、横目で探すと、ひーちゃんの首が、なにか白くなってら。
ははは。
見ていたのは俺だけじゃなく、他の連中も笑い出した。

あれは、壬生がおもしれえんだな。
ふこふこした、真っ白いマフラーで、ひーちゃんをグルグル巻きにしてやがる。
しかし長いな…。
ひーちゃんの首が細いせいかな、何周させてんだろう?
そう思ってたら、ひーちゃんは、そのマフラーを、すっぽり、セーターを脱ぐみたいに外して、そのまんま壬生の首に被せた。
今度は壬生が、やたら長い毛糸に埋まりこんでる。
「いったい何日かかって編んだんだ?!」
どうやら、壬生のクマはこれが原因らしい、やっちまったな。
そりゃ、皆の調子に気を配るひーちゃんには、腹立つよな。
壬生がクマ作るくらい根を詰めて編んだのが、自分のためとくりゃ、どっちかというと自分に腹立てるのがひーちゃんだ。
壬生、お前アホだろ。
ひーちゃんの性格くらい読めよ、あほ。

結論を先に言うと、壬生は、アホだったが、怒ったひーちゃんの気持ちがわからないほどのバカじゃなかった。
むしろ、自分をせめるひーちゃんに、さらにほだされたというか、何て言うか…
あんまり想像したくはねえな、奴の脳みその動きは。
とにかく。
ひーちゃんは、礼を言って壬生の作品を受け取った。
だけど、そのマフラーをつけて(あのゾロゾロ長いのは、やっぱりマフラーだったらしい。気合いが入りすぎたのか、ぼんやりしてたのか、止め時を忘れたらしい、壬生曰く)ひーちゃんが現れたことはない。
なにしろ、電車の中、駅前の人混みの中、あの白いもけもけは、絶対誰かのファスナーだの、リュックだの、ボタンに引っかかる。
たぶん、電車じゃ誰かの鼻をふさぐだろうし。
なので、壬生の力作は現在、ひーちゃんちのロッカーで眠っている。
壬生は、せっせと次の作品を編んでるらしい。
正確には…幾つめだったかな、とにかく続け様に編みまくってる。
そろそろ俺としては、ひーちゃんに忠告すべきなんだろう。

何でも良いから、上に何か着ろ。
首に巻け。
あったかい格好をして見せてやれ。

それで、壬生の心が落ち着くかどうかは、疑問だけどな。



※ 北国生まれの男子、かくありき。真冬の大雪でも、奴らはコートやジャケットを着ずに制服のみです。そして、おもしろがりつつも気にかけてる相棒。

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