日に日に寒気がつのる頃だが、天狗はそれをいとわない。
しんと冷えた朝、袷一枚で表をふらり歩く横を、綿入れに身を包み背をこごめた人々が通り過ぎていく。
「おお、さぶ」
すれ違った人足の悪態をなぞるように、天狗はつぶやいた。
低い瓦屋根を霜が縁取り、そこへ朝日があたってみるみる溶け、滴がほたりと落ちる。
かっと顔を照らすに目を細めて、後ろ頭を掻いた。
「さぁて。どないしよか」
馴染みの茶屋へ寄り、眠気の勝った敵娼の、とろりとぬくい布団にもぐりこむも良し。
女の機嫌を取りながら一服つけて、茶漬けの一杯もかすめよう。
「悪うないなあ」
次の角、小さな社を行き過ぎて決めようか、と思案して、口角を下げ笑う。
その隻眼が、ひょ、と見開いた。
[3回]
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